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2022-10-26

cornerの社会実験期間が終わっての感想

自分も関わっている『官民連携まちづくり組織ウズマクリエイティブ』が実施した社会実験『corner』が10月23日をもって社会実験期間を満了しました。クライミングウォールとキッチンカーはすでに撤去されましたがその他の設置物(樽や船、大屋根、テーブルや椅子、人工芝など)はもう一か月くらい設置期間が伸びたそうなので、その状態でどのくらいの人にどうやってこの場所を利用してもらえるのかが個人的には興味津々だったりします。

※corner がどういう場所だったかを知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
マチミル#46 栃木市にできた公共空間の社会実験施設【corner】のご紹介

実際にcornerに立ち寄った方がどのような感想を持ったのかはアンケート調査の結果などから見えてくると思うので、運営側・利用者側どっちつかずの立場で関わった自分の視線でcornerの良かったところ、悪かったところや課題、その他感じたことなどを今後の参考のためにつらつらと書き記しておきたいと思います。

よかったところ

まちのなかに自由に座ってくつろげる場所ができた

まずはなんといってもこれでしょう。栃木市中心部は観光地というわりにはまちなかに自由に座ってくつろげる場所がなく、休もうと思ったらどこか飲食店にでも入るしかない環境でした。もちろん公園なんかはいくつかあるのですが、公共性が高すぎる場所というのは個人がくつろぐには案外居心地が悪いもので、cornerのような飲食物持ち込みOKでテーブルや椅子もしっかり備えられている気兼ねなく自由に使っていい場所がまちの中にあるというのは当たり前のようで贅沢だったりします。

小さなお子さんの居る家族連れが気軽に遊びに来れる場所ができた

社会実験期間中はクライミングウォールやキッチンカーがあったというのも大きいと思いますが、これまであまり栃木市中心部で見かけることがなかった小さなお子さんの居る家族連れがcornerにはたくさん来てくれました。僕は子供は苦手ですが、子供が元気に楽しめる場所がまちなかにあることは地域活性という意味ではとても重要な事だと思います。駐車場がすぐ横にあるという利便性も家族連れが訪れる大きな要因だったのかもしれません。

日常的にもイベントにも使える場所ができた

公共空間の整備を考えた時にイベントやマルシェをおこなえる場所をつくるという事が行われます。本当に「イベント開催=地域活性」になるのかという事は置いておいて、そうした場所を作る際にイベント開催以外では活用されない空間が出来上がってしまう例が見受けられます。もちろん毎日なんらかの催しが開催されていればいいのですが、栃木のような地方都市ではそんなことが起こるわけもなく(そうなったら楽しいけど)、平日の誰も使わないだだっ広いスペースはまちなかの寂しさを増幅させます。cornerのような場所の場合、平日でも友達とランチを楽しんだりお酒を飲んだり、人工芝で遊んだりすることが可能なのでイベントが無い時でも有効的に使ってもらえます。その上でなにかイベントを開催する場合には大きな手間をかけることなくオシャレなイベントスペースとしても利用可能です。イベントそのものを目的としなくてもいつものようにふらっと訪れた人がたまたま開催されているイベントを楽しむ。そんな場所があるまちは文化的に非常に豊かなまちと言えるのではではないでしょうか?

10月10日にアーティストを招いての演奏会&映画上映会を開催した時の様子

観光の拠点となる場所ができた

cornerが設置されたのは警察署跡地でここ数年は市が管理する駐車場として利用されていた場所の一部です。今回cornerを設置しても結構な台数を停められる駐車場としての機能はそのままでした。またcornerに先立って始まっていたシェアサイクルの社会実験のポートもcornerのすぐ脇に設置されていました。(※シェアサイクルの社会実験も2022年10月末を持って終了となります。)以上のような条件が重なってcornerは栃木市内に車で訪れる人のパーク&ライドの拠点としても役に立っていたように感じました。観光という意味では栃木市中心部の場合、たとえば大通りと嘉右衛門町間の移動手段が課題としてあげられることがあったのでシェアサイクルも次年度以降再開されるといいなと個人的には思っています。

細かく挙げれば他にもいいところはたくさんあったのですがキリがないので次は悪かったところや課題をいくつか挙げてみます。

悪かったところ・課題

インフラ整備が不十分だった

要望面で利用者の方に一番よく言われたのが「これでトイレがあったらもっと長く居られるのに」という事でした。警察署跡地は水道・電気のインフラが整備されていないのでトイレを置くとなると今のところ仮設トイレという選択になるんでしょうが、今後公共空間として活用していくという事であれば公衆衛生の視点からも水道を引っ張ってトイレの設置は必須です。また今回電源については日中は大型発電機3台、夜間はモバイルバッテリーで賄いましたが、普通に電気を引っ張った方が便利だし視覚的にも聴覚的にも美観を損なわないと思います。

自由度が高すぎて自由に使ってもらえなかった

cornerは栃木市が直接運営するのではなく民間企業が実際の運営を行っていた公共空間です。そのためいわゆる公園と比較すると禁止事項が少なく自由度の高い場所に設定されていました。なので「こういうふうに使いたい」という要望があれば運営者判断で公園や市が直接管理するイベントスペースよりも簡単にいろんな催しができたはずなのですが、そうした使われ方が少なかったような気がします。個人的にプロジェクターを持ち込んで映画鑑賞したり、先述のライブ&映画上映イベントを開催したりして「こういうふうに使えるんですよ」という提案はしたつもりでしたが、なかなか積極的に活用してくれる人が現れなかったのは残念でした。要因としては社会実験期間の短さや市民の皆さんへの広報面の不十分さが挙げられると思いますが、そもそも「公共空間を自由に使う」というパブリックハックの発想が培われていないことも大きいと思います。cornerのような場所を作ってさらに使い方を提案し、必要な管理・調整を行うのは自治体では難しいと思うのでこうした場所を民間団体が運営管理できる仕組みを作ることも今後の課題だと思います。

平日の稼働率の低さ

cornerでは金・土・日キッチンカーを使って様々な飲食店が出店していました。詳細な数字は知りませんが土日はともかく平日金曜日の売り上げは結構厳しかったのではないかと思います。(そんな中でも出店してくださったお店の皆さんには感謝の気持ちしかありません。)上記の「自由度が高すぎて自由に使ってもらえなかった」にも繋がるのですが、今回の社会実験では日常的にcornerという場所を使ってもらうというところまで認知が到達しなかったような気がします。そういう意味では社会実験期間が終わってボルダリングとキッチンカーが無くなった後の土日にどれくらいの人が訪れて利用してくれるのかというのも非常に興味があります。cornerのような公共空間は単純に利用率が上がればいいってものではない気がしますし、そこを評価基準にしても意味がないのですがそれでも最終的にはたくさんの人に利用してもらってまちなかの賑わいに貢献することが目的だと思うので今後またcornerのような場所を本格的に作るときには稼働率を上げるにはどうしたらよいのかという事を多面的に検証する必要があると思います。

まとめ

その他の細かい問題点などはおそらくアンケートなどからも浮き彫りになってくると思いますがとりあえず自分が感じた良かった点、悪かった点はこんなところです。こうして挙げてみるとcornerのような自由な公共空間の運用ってなかなか難しいものだなと思います。一番の難しさはその場所を設置したことでどのような効果がまちにもたらされたのかの数値化がおそらく不可能な事。もちろん来客数やcornerを訪れた人がまちの中でどのような行動をとっていたかの調査はされていたのでぼんやりとした数値はそのうち上がってくるのでしょうが、たぶんcornerのような公共空間の価値ははっきりと数値化される部分の外側にあるような気がしています。今後警察署跡地の活用がどのような形で進んでいくのか全く分かりませんが、cornerのような商業主義に行き過ぎない自由な空間が生まれることを期待しています。

cornerの紹介動画
シェアサイクルの紹介動画
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