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2020-10-08

自家焙煎コーヒー屋の開業費用ってどのくらい必要?

先日 YouTubeで「コーヒー屋さんへの質問募集」をしたところ

「創業の費用や、什器の購入などの話を聞きたいです。 具体的には創業当時に揃えた什器や機械などや、設備や設計の時点でお店を『こうすればよかった!?』と思うところがあれば聞きたいです。」

という質問をいただきまして「そう言えば開業後の収支報告とかはしてるけど開業資金については書いたことがないな~」と思いましたので、改めて創業計画書や領収書などを引っ張り出して調べてみました。ついでに開業から約3年経過して「こうしておけばよかったな~」と思っていることについても書いてみたいと思います。

悟理道珈琲工房の開業費用

ざっくりまとめると開業までに必要だったお金は以下の通りでした。

設備資金

・内装、設備工事・・・ 約3,000,000円 ※工事面積 31.66㎡(約9.6坪)
・厨房設備関係・・・ 約1,300,000円
・家具、什器、看板等・・・ 約250,000円
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設備資金小計・・・約4,550,000円

運転資金・その他

・物件契約料、保険料 ・・・ 約350,000円
・賃料(半年分) ・・・ 約450,000円
・水道光熱費(半年分) ・・・ 約100,000円
・仕入 ・・・ 約80,000円
・消耗品 ・・・ 約50,000円
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運転資金等小計・・・約1,030,000円

開業費合計・・・約5,580,000円

設備資金の詳細

内装・設備工事費

細かく見ていきますと、全体の約8割は店舗の形を作るための設備資金になっています。その中で内装や設備工事など工務店にお願いした部分が約300万円。当店の坪数は約9.6坪ですので工事の坪単価は312,500円です。なお当店の場合、設計やできる限りの施工(下処理や塗装関連、DIY可能な部分)は自分でおこなうことでできる限りの節約をしました。知り合いには水道や電気の施工も自分でやってしまった剛の者も複数居ますが、基本的にその辺は免許がないとやっちゃダメなので注意しましょう。

厨房設備関連

続いて「厨房設備関係」。自家焙煎コーヒー店はここがピンキリになりそうですが、当店の場合おおよそ以下のような内訳です。

焙煎機・・・約80万円
エスプレッソマシン・・・約20万円
ミル・グラインダー・・・約10万円
冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・・・約20万円

焙煎機とエスプレッソマシンは高いものを買おうと思えばいくらでも高くできるのですが、自分がやろうと思っているお店の規模に合わせて機種選定をすることが大切です。うちの場合焙煎機は1kg釜を使っているのですが、3kg釜くらいが適正だったなぁと思っています。1kgも小回りがきいていいのですが。理想は2台での運用ですね。エスプレッソマシンはVIBIEMMEのDomobar.jrというセミコマーシャルマシンを使っていて、こちらは当店のような地方のコーヒー店でそこまで常時連続して抽出する環境でなければ適正なサイズだと思います。タンク式なのでイベントにも気軽に持ち出せます。大きなエスプレッソマシンは水道直結のものがほとんどなので一度設置してしまうと気軽にレイアウト変更ができないという不便さもあります。また色々なエスプレッソマシンを触ってきたのですが正直一定以上のマシンレベルの場合、必ずしも値段が高いエスプレッソマシンの方が美味しいエスプレッソを淹れられるとはどうしても思えないんですよねぇ。エスプレッソの味を大きく向上させるならエスプレッソマシンよりもグラインダーにお金をかけたほうがいいと思います。あと豆。

家具・什器・看板

続いて家具・什器・看板ですが、開業時の当店の主な家具と什器は以下の通りです。

・一人用テーブル 1台
・二人用カウンターテーブル 1台
・五人用テーブル 1台
・木製椅子、スツール 8脚
・カウンタースツール 3脚
・本棚兼商品陳列棚 1台
・フライヤー置き場用テーブル 1台

テーブルや椅子は仁平古家具店さんでまとめて購入しました。非常に気に入っているのでこの3年間何一つ入れ替えていません。大きなテーブルはサイズと色を指定したセミオーダー品です。お店の雰囲気に合う家具を探すコツは普段から家具店や古道具店などを巡って「こういう感じならあのお店にあったテーブルがいいな」とすぐに思い浮かべられるようにしておくことだと思います。店舗内装と家具・什器は切っても切り離せない関係性なので、全体のバランスを大切にすることが重要です。

看板は知り合いのイラストレーターさんに依頼して、出窓のガラスに内側からアクリル絵の具で描いてもらいました。視認性が高くとても目立ち、なによりカッコイイのでこれ以上の看板はないと思っています。

運転資金等の詳細

店舗を始めるためには設備資金以外にも物件の契約に必要なお金や、在庫や固定経費など仮にオープン後しばらくの期間利益が出なくても必要となる運転資金をあらかじめ用意しておく必要があります。

物件契約料、保険料、半年分の賃料

意外と忘れがちなのに結構な額のお金が必要になるのが物件を借りる場合の諸費用です。通常の住居用の賃貸物件同様、敷金・礼金・契約手数料(おおよそ家賃一ヶ月分)・火災保険費用が契約の際に必要となります。これだけでおおよそ家賃五ヶ月分くらいのお金が必要で当店の場合約35万円掛かりました。

またオープン直後は想定していなかった出費がかさみ、仮にそれなりに売上があっても半年くらいは充分な利益は期待できません(というか赤字になることの方が多いのではないだろうか)。なので半年分の家賃くらいはあらかじめ用意しておくと気が楽です。

水道光熱費

自家焙煎コーヒー店はガスも水も結構使うので水道光熱費は高いんだろうなぁと思っていたのですが、実際お店を始めてみたら思ってたより全然安かったです。ガス料金は大体月5,000円くらい、水道料金は2ヶ月で5,000円くらい(これは栃木市の水道料金が安いんだと思います)、電気料金は季節によりますが平均すると月10,000円くらいです。(参考までに真夏はエアコンフル稼働なので2万円弱、その他の季節は8,000円前後になります。)合計すると水道光熱費は月1万円前後。払えなくなって止められるなんてことがないように半年分くらいはストックしておくといいと思います。

仕入れ

開業時に必要なコーヒー生豆やその他材料、物販品の在庫代などです。コーヒー豆ってまとめて買うとそれなりにいい金額になるのでご注意を。

消耗品

コーヒー豆を淹れる袋や紙コップ、コピー用紙や文房具、掃除用具やその他諸々です。

合計5,580,000円は最低限の金額

というわけで悟理道珈琲工房の開業に必要だったお金は大体5,580,000円でした。高いのか安いのかはよく分かりませんが、ウチぐらいの規模のお店をスケルトン状態から営業できる状態にまで持っていって、仮に利益が出ない状態でも半年くらい営業を続けるには大体このくらいのお金があれば大丈夫だと思います。

もちろんこれは最低限必要な額で、開業時に手元に残しておくお金は大いに越したことはありません。

冷静に考えてこれだけのお金をかけてそんなに儲けが出るわけでもない自家焙煎コーヒー店を始めようと思うのは酔狂以外の何物でもないと思いますが、その辺の価値観は人によって違うので「自分の人生に於いてお店を始めることにそれだけの価値がある」と思ったらきちんと準備をしてやってみるといいと思います。

「ここはこうしておけばよかった」というポイント

「設備や設計の面でこうしておけばよかったというポイントがあったら教えて下さい」という質問についてですが、自分の場合は事前にかなり綿密にシミュレーションした上で設計や設備の購入を行ったため、3年近く営業した今でも大きく後悔している点はなく、オープン以来大きな内装の変更もしていません。それでも強いて挙げるなら以下の点が気になっています。

厨房の動線

一人で営業することを前提に設計したこともあり、それなりに忙しくなって週末アルバイトを雇った時に厨房の動線が二人で仕事をするのには無理があることに気づきました。動線、というか厨房内の移動可能なエリアがコの字型になっていて、すれ違うのがやっとの幅しかないので忙しいときは少し厄介です。厨房の広さ的に難しいのですが動線をコの字ではなくてロの字にしておくとクルクル回れるのでお互い気を使えばすれ違いの頻度が下げられて作業しやすいだろうなと思っています。

収納が少ない

これも10坪に満たないお店では致し方ないことなのですが在庫の豆やその他の消耗品などを収納できるスペースが不足しています。収納場所は大いに越したことはないと思います。

まとめ

自家焙煎コーヒー店を始めるのに必要なお金とこうしておけばよかったという反省点について書いてみましたが、まあお金に関してはあればあるだけいいですよね(笑)。ただ現実的にはそうもいかないので、必要となるお金を少なくして節約する工夫は必要だと思います。

例を上げるならば「家賃の安い物件を探す」もっと言えば場所さえ良ければですが「自己所有の物件を使う」などした上で、工事に関してもできる限りDIYすれば出費を減らすことは可能です。

逆に自家焙煎コーヒー店を始めるのであれば設備は絶対にケチってはいけません。焙煎機やエスプレッソマシン、グラインダーなどコーヒーの味を表現するための核をなす設備は一定基準以上のものを使わないと肝心の味という点で魅力を失います。コーヒーに関しては味が良ければお客さんは必ず来るわけではありませんが、味が良くなければ絶対にお客さんは増えません。そういう意味では開業する前にワークショップやセミナーに通ってみるなど「自分への投資」も非常に大切だと言えます。

また店舗設計に関してですが、自家焙煎コーヒー店は他の飲食業に較べると細々とした道具はそんなに必要としない上に「魅せる」道具(焙煎機・エスプレッソマシン・グラインダー)が非常に多く、作業自体で魅せることも重要になってくるので店舗レイアウトはかなり独特です。道具はそれぞれカッコイイものが多いのですがレイアウトを間違えると折角のデザインを活かしきることができません。なので普段からたくさんのお店に足を運び「ここが素敵だな」とか「こんなところを工夫しているんだな」というところを見つけて自分のお店づくりに生かすことが大切です。

なんにせよお店が完成してしまうとそう簡単にはいろいろ変えられないので、事前の計画は慎重(かつできれば大胆)に行う必要があります。

なお市町村によっては新規開業時に工事費の助成金や開業後しばらくの期間の家賃補助が設定されているところもあるので、積極的に活用しましょう。情報は役所の商工振興課やお店を出す地域の商工会議所などに聞くと教えてもらえます。

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