コーヒーは焙煎後何日目が飲み頃なのか一ヶ月かけて実験してみました
豆を買われる方にたまに聞かれるのが「コーヒーって焙煎後何日目ぐらいが飲み頃なんですか」ということです。経験上「浅煎りは一週間から二週間くらい、深煎りは二週間を越してから、なんなら一ヶ月経ったくらいが美味しいです。」と答えてきましたが特に明確な根拠はなかったので実験してみることにしました。
実験方法は以下のとおりです。
浅煎り(中国)と深煎り(マンデリン)を焙煎し、焙煎当日を0日目として以降30日間なるべく毎日味をチェック。評価項目をそれぞれ5項目設定し各項目「前日よりも評価が良い場合には+1、悪い場合には-1、同じ場合には±0」の点数を加えていき、5項目の合計点数が最も高い経過日数を「飲み頃」とする。
単純ですが今までやったことがなかったので実験開始前はワクワクしていたのですが、いざ始めてみると開店準備前に2種類のコーヒーの味のチェックという作業が加わるのはなかなか苦痛でした。
なお、あくまで前日との比較で1点ずつプラスマイナスしていくので、味の変化の幅は評価に反映されていません。あくまで「ピークがどこにあるのか?」の検証となります。またコーヒー豆は店内厨房でタッパーに入れて常温にて保存しました。11月から12月にかけての実験だったので室温は最高でも20度をちょっと超すくらいだったと思います。
また浅煎りと深煎りでは評価項目が一部異なります。浅煎りの評価項目は「酸味・香り・甘み・後味・総合評価(自分の好み)」、深煎りの評価項目は「コク・香り・甘み・後味・総合評価(自分の好み)」のそれぞれ5項目です。それぞれの合計得点が一番高い日が「飲み頃」です。
ではさっそく浅煎りの中国の味の変化から見ていきましょう。
【浅煎り】焙煎後30日間の味の変化
縦軸が点数、横軸が日数の経過です。またグラフは「酸味(濃い青)」「香り(オレンジ)」「甘さ(グレー)」「後味(黄色)」「総合評価(薄い青)」「合計得点(緑)」を表します。全30日の内6日間は定休日等でチェックできておりません。(●印のポイントがない日)
合計得点が一番高かった日、つまり浅煎り(中国)の飲み頃は焙煎から9日目と11日目という結果になりました。10日目と12日目も1ポイント差なので、大体10日目前後が一番各項目のバランスが良く美味しく飲むことができる期間だと言えそうです。
今回実験に使用した「中国・雲南・ナチュラル・ダブルファーメンテーション」は香りの強さが特徴なのですが、12日目以降酸味が先に落ち始めてそれに引っ張られるように香りも徐々に落ちていきました。科学的なことは分からないので正確なことは言えませんが、酸味と香りはコーヒーの成分の中でも劣化もしくは揮発性の高い成分なのかもしれません。
面白いのは24日目以降酸味が持ち直していることです。僕の舌に問題がある可能性もありますが、明らかに一旦落ちきった酸味が回復しているように感じました。理由はさっぱりわかりません。謎です。
また今回の実験とは直接関係ないのですが、実験に使用した豆とほぼ同時期に焙煎した豆を冷蔵庫で保存しておいたところ、焙煎後20日を経過しても常温保存と比較して酸味や香りがしっかりと残っていました。保存状況によって味の変化には大きな差があるようなので、これについても後日実験で検証してみたいと思います。
続きまして深煎り(マンデリン)の実験結果です。
【深煎り】焙煎後30日間の味の変化
こちらは「コク(濃い青)」「香り(オレンジ)」「甘さ(グレー)」「後味(黄色)」「総合評価(薄い青)」「合計(緑)」の5項目で評価しています。
深煎りのマンデリンの飲み頃は焙煎から23日目と24日目という結果になりました。浅煎りよりも味のピークが10日以上遅めにやってきます。逆に焙煎直後の3日間はどの項目も変化が見られずスカスカとした抜けた味でした。その後ゆっくりとコクや苦味、甘みが増していった印象です。
浅煎りと比べると味の変化のスピードはかなり緩やかで、実験最終日である焙煎後30日目でも普通に美味しく飲むことができました。
ただしちょっと表現が難しいのですが、油分のコクでコーティングされていて感じにくさはあるものの、甘さは17日目以降ゆっくりと確実に低下していっていました。枯れた苦味を好まれる方は焙煎後30日の味が飲み頃、苦味の中にも甘さや奥行きを感じたい方には16日~20日目が飲み頃と言えるかもしれません。
深煎りに感じてはおおよそ事前に予想していた通りの味の変化でしたが、細かくチェックすると甘さとコクが意外と繊細なバランスで成り立っているんだなというのが新しい発見でした。
総評
グラフを並べてみると一目瞭然ですが「浅煎りの方がピークも風味の劣化も早く、深煎りはピークが遅い上に長い期間楽しめる」というおおよそ事前に予想した通りの結果となりました。
ただし設定した各項目の微妙な日ごとの変化など新しい発見もあったので、わざわざ30日かけて実験したのは無駄ではなかったと思います。
浅煎りの方で書きましたが、この実験に関してはコーヒー豆の保管状況によって結果は大きく異なると思います。常温と冷蔵、そして冷凍では味の変化がどう異なるのかはとても興味があるので近いうちに実験しようと思います。
またざっくりと「浅煎り」「深煎り」に分けていますが、おそらく豆の種類によって同じ焙煎度合いでも味のピークや変化は異なるものと思います。さすがにそこまで検証する気はありませんが、普段飲むコーヒーの味の変化を気にかけておくと飲み頃を逃さず、またコーヒー豆の購入時にも役立つこともあるかと思います。
以上「焙煎から30日間のコーヒーの味の変化を検証する実験」でした。あー疲れた。